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初期漢訳仏典の研究 -- 竺法護を中心として
Author 河野訓 (著)=Kawano, Satoshi (au.)
Date2006.03
Pages310
Publisher皇學館大學出版部
Publisher Url http://www.kogakkan-u.ac.jp/http/syupan_bu/
Location三重, 日本 [Mie, Japan]
Content type書籍=Book
Language日文=Japanese
Note博士論文 (東京大学, 1999年提出) の一部を出版したもの
Abstract 初期の中国仏教研究では、一般に思想研究というよりも、仏典漢訳の歴史の研究いわゆる訳経史研究がその中心である。その際には、通例としては安世高研究、支婁迦識研究、支謙研究などと仏典漢訳者ごとに研究が行われてきた。

 このようななかで、学問的な方法としての訳経史研究の方法は林屋友次郎の『経録研究』でかつて検討され、その後、そこで示された諸々の方法にしたがうかたちでいくつかの研究成果が示されてきた。また、それに並行して、局部的な方法の見直しが検討されたり追加されたりしている。しかし、『経録研究』から数十年を経た現在、各分野におけるすぐれた研究成果により、螺旋的にその全体としての水準は高められ、その研究方法の再構築が迫られている。

 本論文は『経録研究』以降の研究成果を交えながら、その諸方法の再検討をすることにより、訳経史研究の今後のあり方と可能性を示し、第二章以下においてはそれにより近いかたちで具体的に漢訳された仏伝と竺法護の訳出経典を読み進め、仏伝を中心とした初期漢訳仏典及び竺法護の経典訳出の特徴を明らかにすることを意図している。

 本論文で一貫している方針は経典をできるだけ正確に読むことである。そのために採られる方法は、サンスクリット語テキスト、チベット語テキスト及び漢訳された異訳経同士の比較である。結果として、対照表と訳注の論文全体に占める割合が高くなっている。これはひとえに、経典をどのように読んだかを提示するためであり、表れた文字面のみから漢訳経典の技巧的な側面を取り上げて語彙、語法の特徴を述べることを避けるためである。

 経典を正確に読み解くには漢訳仏典のもつ背景を常に考慮しなければならない。漢訳仏典は漢文によって書かれた文献であるから、漢文の訓詁による読みの方法が採られなければならない。語法については、口語を多く取り入れていることから、中古文法も参照しなければならない。語彙についていえば、漢訳仏典は仏教の文献であるから、仏教それ自体についての基礎知識を必要とする一方で、術語については仏教漢文文献の中でその典拠を求める作業が必要である。それは仏典の中で用いられる語句が、中国古典と同じ意味で用いられる場合もあれば、無理な造語の結果、仏教独自の意味をもつことがあり、仏教語としての初出が重要な意味をもつからである。

 本論文でははじめに第一章として経典目録を研究することにより、広く訳経史研究の方法について論じた。その中では主に梁啓超と林屋友次郎の方法論を取り上げたうえで、学界における訳経研究の現状と可能性を論じた。

 内容の上で、本論文は大きく二部に分かれる。第二章の「中国の仏教受容」と第三章及び第四章における竺法護の訳経研究である。

 第二章では漢訳仏教世界の形成されたさまを論じた。仏教は仏の教えである。中国に仏とその教えがどのようなものとして伝えられたのか、初期の仏伝をたよりにその様を明らかにするとともに、他の諸文献も交えて、どの点がとくに強調されつつ受けとめられたのかを論じた。

 まず序として、中央アジアを経由して伝えられた仏教の概要を把握するために、仏塔、仏像、石窟という形に表れた仏教美術文化、于〓と亀〓という二つの仏教文化の中継都市の仏教、さらに大乗仏教と部派仏教という異質な仏教の伝来について論じ、次に、仏教を受容した中国社会との関わりの中で、仏教がどのように変容していったのかを、老荘思想、道教及び儒家の孝、礼教主義との関わりで論じた。

 そのうえで第一節では、初期の仏伝である『修行本起経』、『太子瑞応本起経』、『普曜経』の比較対照を行いながら、仏について、一体何が紹介され伝えられたのかを取り上げた。元来インドでは諸部派ごとに異なる仏伝を保持していたと考えられるが、中国に伝えられた仏伝は諸要素が混在している。この節では、後漢の訳出とされる『修行本起経』の成立が、考えられていたよりも時代がくだるものであることも併せて論じた。

 仏伝に続いて、仏教思想及び仏教受容当時の中国の思潮から、本末、縁起、生死、輪廻、自然を取り上げ、このような基本概念が中国ではどのように意味で受け止められていたのか、あるいはそれに関連して仏教の思想がどのように深められたのかを論じた。

 第三章及び第四章は竺法護についての研究である。

 第一節では正史と仏教文献に見られる竺法護伝により歴史上の竺法護を浮き彫りにし、杜会的要因からくる竺法護の特殊事情について論じた。

 第二節で竺法護の訳出経典といわれるものを経録のうえで詳細にたどり、さらに高麗本、宋本など刊本大蔵経の記載内容の違いからその訳出年時を明らかにすることにより、併せて竺法護の翻訳語彙の変化を見るための基礎作業を行った。すなわち、当初、漢語に習熟していなかった竺法護の前後約四十年にわたる訳経活動の間に使用語彙の変化が見られるのではないかと予測され、それを考えるのに必要な、訳出年時の明らかな経典を抽出することは不可欠の作業だからである。

 第四章では、竺法護の代表的な経典である『正法華経』、『漸備一切智徳経』、『如来興顕経』の三経を取り上げ、本文、諸テキストを提示して、訳経の方法、スタイル、語彙などを論じた。この三経は、経録等の伝承から竺法護の訳出であることが明らかであること、いずれも異訳経典あるいは他言語のテキストが豊富であることから、比較研究に用いるテキストとしては十分にその任に堪えうるものである。

 はじめに序として、四世紀から現代に至るまでの竺法護の訳風とされてきた特徴を整理した。

 第一節では『正法華経』を『妙法蓮華経』及びサンスクリット語テキストを参考にして読みながら、竺法護の訳の特徴を取り上げた。『正法華経』には『妙法蓮華経』及びサンスクリット語テキストにはない経典の解説、法供養を述べる箇所及び入海採宝の逸話がある。経典の解説の部分ではそれが後の挿入ではなく竺法護の真訳であること、法供養を述べる部分については竺法護の『維摩経』の訳の可能性について、また入海採宝については同様の逸話が現存する竺法護以前の経典には見出せないことを論じた。

 第二節では『漸備一切智徳経』の本文研究を行った。『漸備一切智徳経』、とりわけその第六地は他の翻訳経典と異なり深遠な教理内容を多く含んでおり、十地経の中でも特に重要視される住地である。サンスクリット語テキストと比較をしながら、竺法護の訳の特異性、雑然さ、訳の不適切さを指摘した。

 第三節では『如来興顕経』の本文研究を行った。サンスクリット語テキストを欠くため、チベット語テキストを参考に、他の漢訳の異訳経典を用いながら、竺法護の訳の特殊さを論じた。

 第四節では第一節、二節、三節から用例を抽出して竺法護の訳経の特徴をまとめた。すなわち、竺法護の時代の思潮として玄学がある。それとの交渉のなかで、竺法護の訳経は進められてきた。竺法護の訳経には竺法護自身の考えが挿入されており、いわゆる補填訳となっている。その中でもとりわけ「成仏」すること、「本浄」であることが強調されており、例を挙げて明らかにした。

 竺法護は同一経典内で同一語を種々に訳し分けている。『漸備一切智徳経』では、第一地から第十地を通じてほぼ同じ内容の箇所が見られるが、その部分の訳は様々である。種々に訳し分けるその手法は例えば、Skt.sattva(一般に衆生と訳される)一語に種々様々な訳語が与えられていることからも知られる。類義語を重ねて新語を作る造語法や複合語の一部をほぼ同義の他語と入れ替えて新語を作る場合もある。以上は、経典の訳語を豊富にして、豊かな表現を求めた例である。

 その一方で、竺法護には経典を完全に理解していなかったのではないかと考えざるをえない箇所がある。原テキストの語順どおりに意訳語を一対一対応させただけで意味の通る漢文としていない箇所、整然と法数によって訳すべきところを読み切っていない箇所がある。このような点は、竺法護の漢訳の限界としておきたい。

 最後に、四世紀後半に出た道安が唱えた五失本三不易という翻訳論と竺法護の訳経について論じた。道安は竺仏念の翻訳を批判しつつ五失本三不易の論を展開したといわれている。しかし、道安のいう五失本三不易という翻訳論は竺法護らの行ってきた経典漢訳全般に対する反省と考えられる。
ISBN487644126X; 9784876441266
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Created date2009.07.17
Modified date2014.05.26



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