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日本人にとって聖地とは何か
Author 内田樹 (著)=Uchida, Tatsuru (au.) ; 釈徹宗 (著)=Shaku, Tesshu (au.) ; 茂木健一郎 (著)=Mogi, Kenichiro (au.) ; 高島幸次 (著)=Takashima, Koji (au.) ; 植島啓司 (著)=Ueshima, Keiji (au.)
Date2019.03.30
Pages240
Publisher東京書籍
Publisher Url https://www.tokyo-shoseki.co.jp/
Location東京, 日本 [Tokyo, Japan]
Content type書籍=Book
Language日文=Japanese
Note伝説の公開講座「聖地巡礼フェスティバル」完全再現。
NDC(9版)はNDC(10版)を自動変換した値である。
Keyword宗教; 日本; 聖地
Abstract多年、聖地巡礼を実践してきた内田樹と釈徹宗が、3名の碩学(脳科学者・茂木健一郎、歴史学者・高島幸次、宗教学者・植島啓司)と争った聖地論争。
脳科学、歴史学、宗教人類学の視点から「日本人と聖地」の関係性を探る!

まえがき
本書は「聖地巡礼フェスティバル」と銘打った公開講座の書籍化です。内田樹先生が運営する合気道道場・凱風館で行われました。これまで内田樹先生や巡礼部(凱風館門人を中心としたサークル)と共に、「聖地巡礼」と称する街場歩きや小旅行を行ってきました。その様子はシリーズ書籍化されており、東京書籍より四冊目が発刊されています。

(1)『聖地巡礼ビギニング』…「出かけよう!宗教性をみがく旅へ」大阪府/京都府/奈良県

(2)『聖地巡礼ライジング』…「人はなぜ熊野に惹かれるのか」和歌山県・熊野

(3)『聖地巡礼リターンズ』…「日本人とキリスト教」長崎県/京都府/大阪府

(4)『聖地巡礼コンティニュード』…「日本の源流を求めて!」長崎県・対馬

この聖地巡礼シリーズの一環として、「聖地巡礼フェスティバル」は開かれました。ちょうど(3)『聖地巡礼リターンズ』と(4)『聖地巡礼コンティニュード』の間にあたる時期です((4)が対馬行きとなった経緯は、本書をお読みになればわかります)。

「聖地巡礼フェスティバル」は、“あらためて聖地や巡礼について、識者から意見を聞かせていただこう”という取り組みでした。ご来駕いただいたのは、茂木健一郎・高島幸次・植島啓司の三師。三者三様、いずれおとらぬクセ者ぞろいです。いずれの言説も、何年経とうが決して古びることのない、世界や人類の本質に関わるものですので、繰り返し読んでも長くお楽しみいただけるはずです。

■聖と俗の概念

さて、「聖地巡礼」とは、“聖なる場”へとおもむく行為です。この“聖”とは、どういうものなのでしょうか。

宗教研究の流れで見ますと、“聖”という概念は宗教の最大公約数として使われてきました。もともと欧米で発達した宗教研究において、宗教とは神を信じる行為を指していました。しかし、その後、プレアニミズムなど神観念をもたない原初的宗教が取沙汰されたり、仏教のように神への信仰を中軸に設定されない宗教が注目されたりと、宗教現象や宗教行為を“神”で包括するわけにはいかなくなります。そこで“神”に代わって、宗教を考察する上での最大公約数として“聖”が発見されます。と同時に“俗”という概念が対置されることになります。聖と俗という図式だと、超越的存在や超自然的現象や非日常的時空間や特定の心理状態など、多くの宗教構成要素をカバーできます。実に使い勝手がよいわけです。

宗教研究を聖と俗の構図で考察した人物に、社会学の巨人、E・デュルケムがいます。デュルケムは俗から分離した領域を聖と捉え、聖が俗へと及ぼす影響について詳述しています。デュルケム以降、宗教を考察する場合、聖と俗を前提とする態度が多くなりました。また、哲学者のR・オットーは、聖なるものを「まったく独特な宗教体験」「宗教そのもの」であるとして、それを生み出している固有の本質をヌミノーゼという造語で表現しました。ヌミノーゼとは、“聖”の中核要素であり、合理的に把握や解説ができないものであり、直接的体験によって直感するものだと言うのです。この視点から言えば、我々はヌミノーゼ体験を求めて、日本各地をうろついているということになります。

■拮抗する聖と俗

ただ、実際に聖地と呼ばれる場へ足を運ぶと、いかに聖と俗が未分化で交錯しているのかを実感することになります。デュルケムが言うほど聖と俗は分離していません。この点は、文化人類学者のA・ファン・ヘネップが言うように、聖と俗は両義的であり、状況において変化するものなのでしょう。

たとえば、本書の中でも触れていますが、聖地とされている場にはしばしば、こちらをがっかりさせる人工物が配置されていたり、実に卑俗な商店が軒を並べていたりするのです。はじめの頃は、「なぜこんなものが、こんなところに……」などと嘆いていたのですが、そのうちに内田樹先生が「強烈な聖性に対して、猥雑な俗性が配置されることで、バランスがとられている」などと言い出しました(これについては内田先生による「あとがき」をお読みください)。聖は聖として、ぽつんと宙に浮いているわけじゃないんですね。聖は俗によって輪郭が浮かび上がり、俗は聖によって生命力が吹き込まれる、そんなことになっていると思います。このことは、頭では簡単に理解できるのですが、リアルに体感するためには、やはり聖地へとおもむくのが一番でしょう。

■辺境の聖地に惹かれる者たち

ところで、宗教史研究者のミルチア・エリアーデが『聖と俗 宗教的なるものの本質について』の中で、“世界の中心としての聖地”というのを語っています。

「<吾は世界の中心にあり>という叫びは、聖なる空間の最も重要な意味の一つを明かす」とし、クワキウトル(コロンビア)の信仰や、フローレス島のナダ(インドネシア)の信仰を取り上げ、パレスチナのゲリジム(世界軸とも地の臍とも呼ばれる)やエルサレム、カアバ神殿(サウジアラビア)、中国・イランには世界の中心であるとする神話や信仰が強いことを紹介しています。「世界の中心はここだぞ~!」と叫んでいるのが聖地だというのですね。

しかし、これまでわれわれが訪れた聖地は、いずれも「ここが世界の中心である」といった主張は見られませんでした。むしろ、どの聖地も「ここは辺境なんですよ」「世界の周辺にいます」と、小声でささやいているようでした。

よく考えてみると、われわれはそういう聖地が好きなので、わざわざ周辺型聖地を選んでいるような気がします。“聖からのささやかな声に、耳をそばだてる”といった態度に魅力を感じているのでしょう。私も内田樹先生も巡礼部部員も、“大きな枠からこぼれるもの”に惹かれるタイプなのだと思います。

内田先生と巡礼部の皆さん、今回も本当にありがとうございました。また、聖地巡礼フェスティバルのご講師を勤めてくださった、茂木先生・高島先生・植島先生に感謝申し上げます。

そして、本書の刊行にあたり、東京書籍の植草武士さんに厚く御礼申し上げます。お世話になりました。また、「聖地巡礼フェスティバル」開催や、このシリーズの引継ぎ業務につきまして、前担当者である岡本知之さんにご尽力いただきました。ありがとうございました。

※引用文献・参考文献

土屋博「聖俗問題と宗教学の可能性」『聖と俗の交錯 宗教学とその周辺』所収、北海道大学図書刊行会

M.エリアーデ『聖と俗 宗教的なるものの本質について』風間敏夫訳、法政大学出版局

2019年2月

釈徹宗
Table of contents第I部 VS茂木健一郎
「日本人における聖地とは?」(日本人にとって聖地とは何か?;聖地につながる起源問題;センチメンタルな聖地 ほか)
第II部 VS高島幸次
「大阪の霊的復興」(大阪の霊的復興;何度も都市格を変えてきた街;文化より政治経済優先の植え付け ほか)
第III部 VS植島啓司
「日本の聖地の痕跡」(古代交通としての海路;人類と文明の起源は東南アジア?;倭人と日本人の海の記憶 ほか)
ISBN9784487809684; 4487809681
Hits29
Created date2023.09.12
Modified date2023.09.12



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