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他者のための推理における実例の役割=The Role of the Example in Parārthānumāna
著者 児玉瑛子 (著)
掲載誌 智山学報=Journal of Chizan Studies=智山學報
巻号v.71
出版年月日2022
ページ0061 - 0077
出版者智山勧學會
出版サイト https://www.chisankangakukai.com/
出版地東京, 日本 [Tokyo, Japan]
資料の種類期刊論文=Journal Article
言語日文=Japanese
キーワードDharmakīrti; Dharmottara; dṛṣṭānta; parārthānumāna; svabhāvapratibandha
抄録 ダルマキールティの論理学において、実例は論証因に含まれるものとみなされ、独立した論証式の構成要素として定義づけられることはない。ダルマキールティが論証因の特質として重視するのは〈本質を介した必然関係〉、すなわち結果因がもつ因果性と本質因がもつ同一性である。そうした〈本質を介した必然関係〉を明示することが実例の役割であるが、同類例と異類例では、その役割について差異が見られる。ダルマキールティは、ディグナーガの説を発展させ、究極的には同類例をも含む実例が不要であるとするのに対し、ダルモーッタラは、異類例は実在物である必要はないが、必ず述べられるべきものであると解釈する。ダルマキールティは〈本質を介した必然関係〉の理解を重視しており、彼の実例に関する記述からは、あくまで推理論の体系としてそれを取り扱う態度が見られる。一方、ダルモーッタラは論証の形式を重視する傾向があり、彼の実例に関する解釈には、論証が推理論に統合される以前の、討論術としての論証概念が色濃く残っている。

 In Dharmakīrti’s logic, the example (dṛṣṭānta) is considered to be included in a logical reason (hetu) and is not defined as an independent component of a syllogism. Dharmakīrti emphasizes the “essential connection” (svabhāvapratibandha), that is, the causality (tadutpatti, etc.) of kāryahetu and the identity (tādātmya, etc.) of svabhāvahetu, as a characteristic of logical reason. While the example’s role is to specify the “essential connection,” some differences exist between the role of similar (sādharmyadṛṣṭānta) and dissimilar examples (vaidharmyadṛṣṭānta). Dharmakīrti develops Dignāga’s theory and ultimately eliminates the need for an example, including a similar example, whereas Dharmottara explains that a dissimilar example does not have to be an entity but must be stated. Dharmakīrti attaches great importance to understanding the “essential connection,” and his description of the example treats it as a systematic theory of inference (anumāna). On the other hand, Dharmottara tends to emphasize the form of proof, and his interpretation of the example is characterized by vestiges of debate before proof (sādhana) was integrated into a theory of inference.
目次《抄録》 61
序 61
1.他者のための推理における実例の定義:実例の特質=論証因の特質 62
2.論証式における実例の提示 64
3.論証式における実例の役割 66
4.〈異なる属性をもつこと〉による実例は不要か? 68
結論 72
参考文献 73
ISSN02865661 (P)
DOIhttps://doi.org/10.18963/chisangakuho.71.0_0061
ヒット数80
作成日2023.05.26
更新日期2023.05.26



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