Prajnapradipa-tika第1章においてその著者Avalokitavrataは,dharmaについて「自相を保持するからdharmaである」というように『倶舎論』と同様に定義した上で,自相を,「世俗的な諸法の自相」(kun rdzob pa'i chos rnams kyi rang gi mtshan nyid)と言い換え,さらにそれを不浄(ma dag pa)と浄(dag pa)との二つに分類する.前者に関しては色(rupa)にある「壊れる」という特徴などが挙げられ,もう一方には「無自性」と「不生」とが相当するとされる.本稿においては,Avalokitavrataの示した世俗法の有する,「無自性」や「不生」といった,ものごとの在り方に関する中観派としての立場を表す相に着目し,それを二諦説の文脈の中で論じた.また,PrajnapradipaおよびPrajnapradipa-tika第24章の世俗諦には,pudgalaに関する言明と,dharmaに関するそれが示されており,論考を通じて,BhavivekaとAvalokitavrataの世俗諦の中には複数の層が設けられていることを明らかにした.
目次
1.Two Levels of the Conventional Truth in the 24th Chapter of the Prajñāpradīpa and Its Ṭikā 1200 2.Third Level of the Conventional Truth in the First Chapter of the Prajñāpradīpa-ṭikā 1202